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「 拓魂 第47号」 平成28年10月10日発行

『私の柔道人生』

学部66期 安齊 悦雄

本年に入り、「県スポーツ界の発展に尽力した」とのことで、一月に静岡新聞社スポーツ賞、五月には県体育協会体育章を頂戴した。 好きで柔道を始め、自分のためにやってきたことがこのような形で評価されることは大変ありがたく、光栄に思っているが、正直、恐縮するところがある。

思えば、中学時から柔道を始め、今日まで約六十年間、一度も離れることもなく一貫して携わってきた。

今更ながら、何でここまで続けられたのかと思うに、第一には柔道が好きであったこと、そして健康で丈夫な身体であったからではないかと思う。しかし、どんなに好きでも、続けたくても、怪我や病気であったり、進学や就職等の転換期等、様々な環境変化の中で継続できないことが少なくない。

先ずは、丈夫に生み育ててくれた両親に感謝。私の場合、幸運?にも大学進学や就職は、全てが柔道がらみであった。そして、なんと言っても人との巡り会い、指導者をはじめとする出会いが大きな要素となる。特に、社会人となってからは、職場の環境や家族を含めた理解者や協力者、時々にサポートしてくれた方々との出会いというものが大切な要素となっている。

中学入学時から高校まで師事したのが当時六十歳の齋藤次郎先生。京都帝大卒の温厚な方で、中・高一貫して叱られた記憶はない。指導は柔道理論中心で基本練習ばかりで中学時は一切試合禁止。全くの不完全燃焼状態であった。それが功を奏したのか高校で初出場の大会で優勝し、二年時から国体や高校総体へも出場できた。

これら全国規模の大会出場により、スカウトで来訪された木村政彦先生との出会いとなり、拓大進学が決まる。大学時代は中・高時代とは真反対と言っていいくらい強烈でインパクトのあるものであった。なんと言っても、この四年間の体験(壮絶であったので詳細は割愛)で培われたものが今日まで続けてこられた最大の要因だと思っている。

幸い一年時からレギュラーとなり、全日本学生初優勝をはじめ、同準優勝や国際大会、海外遠征等々の経験ができた。

就職も柔道つながりで、企業スポーツからの勧誘が多々あった。 当時の中曽根康弘総長から推薦された富士製鉄(現新日銀)を断り、花島紀久雄先輩(六三期)やOB関係者のいる柔道部創部予定の河合楽器へ。河合では全日本実業団大会準優勝や全日本出場等の成果を挙げるも会社都合で、わずか三年で廃部となってしまう。すると拓大の草間弘栄監督から声が掛かり、監督の会社に所属しながら再び木村先生の元で監督、コーチとして学生と稽古しながら全日本や国際大会へ出場することになる。

そんな柔道漬けの四年目、部のスポンサー的存在であった元監督の会社が倒産、柔道どころではなくなり、いよいよかと思っているところへ静岡から栗田潔先輩(四三期)、西田亀先生(県警師範)が上京され、静岡県警の指導者として奉職することになる。

当時、全日本強化指定選手であったが、指導専門職になることから現役引退も考えていたが、県警では選手補強もままならない、大会成績も挙からないで指導者としてジレンマの毎日。ならばと現役続行を決め、指導者と二足のわらじで、全日本や国体出場など三十六歳まで続けた。

奉職二年目、三十歳の春、全柔連の醍醐敏郎強化委員長からの海外指導要請でハンガリーへ行くことに。モントリオールオリンピックの年、ナショナルチームの強化指導である。着任まもなく、ソ連(キエフ)でヨーロッパ選手権があり、私の推薦した選手がハンガリー柔道史上初となる金メダルを獲得。必然的にモントリオール五輪への出場となり、監督として同行することになる。そして、なんと同選手が、これまた同国柔道史上初の銅メダルを獲得してしまう。 (この功績により、平成二十一年、同国柔道伝来百周年にあたり、家内とともに招待され表彰された。)

海外派遣から帰国後、県警の強化策がようやく聞き入れられ、選手の補強や稽古環境の改善で、奉職五年目にして県警史上初となる関東警察大会で優勝を果たす。

指導者として、中・高時代、大学時代以降に師事した先生方の柔・剛ともいえる指導法を取入れ、全国警察大会準優勝や全日本・国際大会の出場選手育成など、成果を挙げることができ、以後二十年間監督を勤めることとなった。

また、この間、全柔連、県柔協、県体協等々の役員として携わり、国内はもとより、海外への指導派遣などにより、多くの友人・知人との交流が大きな財産となっている。

これまでの人生の節目、節目で、この柔道によって助けられてきた感があり、私の人生そのものといっても過言ではない。

今日まで柔道に関われる喜びを感じながら、今後も、柔道のすばらしさ、スポーツのすばらしさを伝えるべく、斯道発展のため尽力していきたいと思っている。



拓魂


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